画像:Googleマップより
辺野古
誰もが一度は耳にしたことがあるであろう「名護市辺野古」
名護市中心市街地の南東に位置し、普天間基地の代替移設地キャンプ・シュワブや国立沖縄高等専門学校がある地域です。
第37回つつじ祭りの帰りしな、キャンプ・シュワブのゲート前を通り、写真を撮ったので紹介します。
写真集
↑国道331号、大浦あたりから撮影した辺野古崎
↑ゲート前
↑多くの警備員
↑道を挟んで対向側では座り込みが行われている
1995年の少女暴行事件をきっかけに高まった反基地運動で、1996年に橋下内閣下で普天間基地の5年ないし7年以内に返還することで日米合意がされました。返還の条件として「沖縄本島東海岸沖」に代替基地を建設することが示され、候補地として浮上したのがキャンプ・シュワブがある名護市辺野古でした。
1999年、当時の稲嶺恵一知事と岸本健男名護市長は「軍民共用」や「15年の使用期限」「条件が満たされなければ受け入れを撤回する」などの条件付きで受け入れを表明しましたが、米国がこの条件に難色を示し、後に条件は大きく変わります。
2006年に起きた沖国大米軍ヘリ墜落事故をきっかけに「米軍再編ロードマップ」が示され、移設と負担軽減に向けた新たなV字滑走路案や海兵隊員約8000人のグアム移転が日米合意されました。V字滑走路案は当時の島袋吉和名護市長が計画に合意しますが、稲嶺知事は協議には応じるとした「基本確認書」に署名はしたものの、移設先が沖合から沿岸部(集落)に近づいたことを懸念し、計画を拒否し、協議も進むことなく知事を退任します。
2009年に誕生した民主党政権鳩山内閣で「最低でも県外」と大々的に謳われたものの、結局は県外移設を断念し、当時の鳩山首相は辺野古への代替移設回帰を表明します。この時、県民は希望を抱きましたが、一気に地面に叩きつけられた気持ちになったことでしょう。
2013年に当時の仲井真知事が移設に向けた辺野古の埋め立てを承認しますが、その後の知事選でオール沖縄率いる翁長氏に敗北し、翁長雄志知事が誕生します。そして国と県の対立は激化していきます。
翁長知事は前職の仲井真知事が行った埋め立て承認に瑕疵があったとし取り消し処分を行います。以降、国と県の対立は法廷闘争へと移ります。
当時の国交大臣は「取り消しの効力停止」と「代執行の手続き」を行い、県は効力停止を不服として那覇地裁に提訴したり(抗告訴訟)、国地方係争処理委員会への申立(後に却下される)を行います。
国交大臣も知事の埋め立て承認取り消しは違法だとして福岡高裁那覇支部に提訴。
これらの訴訟に対し、福岡高裁は和解勧告を行い、国と県はともに訴訟を取り下げます。
和解内容は、国は名護市辺野古の埋め立て工事を中止し、両者で話し合うとともに、解決できない場合、国が地方自治法245条7の「是正の指示」から、埋め立て承認取り消し処分の取り消しを求める手続きを始めるという内容でした。
その後、国交大臣は知事に対し地方自治法に基づき、承認取り消し処分の取り消しを求める是正の指示を行いますが、知事はこの是正指示の適否を求め国地方係争処理委員会に申出を行いましたが、同委員会は是正指示の適否について判断を示しませんでした。県は決定に不服の場合、政府の是正指示取り消しを求めて高裁に提訴できますが、知事は「法廷闘争で解決を図るべきものではない」「問題解決に向けた実質的な協議を行うことを期待したい」と述べ提訴しませんでした。
国は知事が是正指示に従わないのは違法(不作為)だとして福岡高裁那覇支部に提訴します。(辺野古違法確認訴訟)
国は「翁長知事の取り消し処分自体が違法で、仲井真前知事の承認も法的瑕疵はなく適正」と訴え、県は「国交相の是正指示は違法で、知事の取り消し処分は適法」と訴えました。
違法確認訴訟は最高裁まで争いましたが「仲井真知事の承認処分は、公有水面埋立法に照らして違法性はない」とし、翁長知事の取り消し処分は違法とする判決が下り、県の敗訴が決定しました。
「取り消し」とは、埋め立ての審査に法的瑕疵があった場合に行えるものですが、最高裁での敗訴が確定したので、埋め立て承認後に違反や新たな事情が認められる場合に行える「撤回」に向け動き出します。しかし、その最中に翁長知事が逝去します。
知事不在中、職務代理を務めた富川副知事と、承認撤回に関する権限を委任された謝花副知事は、生前の翁長知事の指示に従い承認撤回を発表。
撤回の理由としては「軟弱地盤の問題」「環境対策が不十分」「話し合いが不十分なのに工事を進めている」と挙げています。
逝去に伴い行われた知事選では翁長知事が生前指名したとされる玉城デニー氏が勝利を収め、再び承認撤回に関する訴訟合戦が繰り広げられています。
国交大臣は承認撤回の効力を一時停止することを決定し、県はそれを不服とし効力停止の取り消しを求め2日前の2019年3月22日に福岡高裁那覇支部に提訴しました。
選挙結果を見た時
2010年の名護市長選では、V字滑走路案に合意した移設容認派の島袋氏が、移設反対を掲げた稲嶺氏に敗北し、その後稲嶺氏は2期市長を務めますが、2018年の市長選では移設の賛否を示さなかった渡具知氏が勝利を収め、保守系のほぼ移設容認派と思われる渡具知市長が誕生しました。
仲井真知事が埋め立て承認したあとに行われた知事選では、移設反対を掲げたオール沖縄率いる翁長知事が勝利を収めました。翁長知事死去に伴う選挙では後継者の玉城デニー知事も誕生しています。
2019年2月に実施された県民投票では、投票率52.48%で、投票総数に占める移設反対の票は71.7%となりました。(反対票43万4273票)
普天間基地を有する宜野湾市は佐喜真淳氏が27年ぶりに保守市長として誕生して以降、現職の松川市長へと引き継がれており、辺野古移設の賛否は示していませんが、早期返還と固定化阻止を訴えています。
「基地問題」は一言では言い表せない複雑さがあり、県民は困り果てていることでしょう。
メディアやネットを見ていると、あらゆる情報が入ってきます。
- 国と県の言い分はどちらが正しいの?
- 沖縄戦の悲劇と米軍による土地の接収、その後の米軍統治下の過去。
- 事件事故の多さ(特にここ最近はひどい)
- 国と県は対立しているが、その間、普天間基地はどうするのか?
- 政府の「唯一の解決策」としている強硬姿勢はどうなのか?
- 北部訓練場4010ヘクタールの返還やギンバル訓練場全面返還、西普天間住宅地区の返還など、一定の負担軽減は行われている。
- 基地反対派の活動は正常なのか?クリーンなのか?過激性や違法性は?
- これまでの首長選挙や国政・地方選挙の結果はなにを物語っているのか?
- 県民投票の結果は?県民投票の意味は?選択肢の問題は?
- 日本にある米軍基地(施設)の70%が沖縄に密集している過重負担。
- 負担軽減策は地元目線なのか?地元への説明は十分なのか?地元の声は反映されているのか?
- 基地は経済の阻害要因なのか?基地依存経済なのか?沖縄振興予算と基地はセットで考えるべきなのか?別に考えるべきなのか?
- オール沖縄とはオールなのか?(市町村単位や各選挙結果、チーム沖縄の存在を見た時)
- 福岡高裁の和解勧告後の協議は十分だったのか?是正勧告の適否はどうなのか?
- 翁長前知事の是正勧告受け止めの姿勢は不作為の違法性があるのか?ないのか?
- 辺野古違法確認訴訟の県の敗訴はどう見るべきなのか?
- 岩礁破砕の許可は必要なのか?不必要なのか?
- 承認撤回の切り札で再び法廷闘争に持ち込まれ、辺野古問題はさらに長引かないのか?
- 軟弱地盤や活断層の問題はどうなのか?ジュゴンやサンゴなどの環境への影響は?
- 外交問題や防衛政策と地元の声の兼ね合いはどうなのか?地方団体がどこまで割り込んでいいのか?
- 浦添西海岸埋め立てや那覇軍港移設、那覇空港第二滑走路は許可しているのに辺野古埋め立ては反対。この違いは?
- 中国や北朝鮮の脅威は?離島防衛は?日米安保は?
- 民意は?
これまで沖縄は翻弄され続け、解決することなく長い時間が過ぎていきました。
その間、選挙や裁判など色んな事柄が積み重ねられ、一言で「辺野古移設問題」と言っても色んな角度から見ることができ、県民は選挙の度に頭を抱えていることでしょう。
この複雑さや地理的要因から「沖縄特有の問題」として対岸の火事的に傍観している全国民は、関心を寄せてほしい。
これまで僕は何度もブログに書いてきましたが、ネットを見れば過激な意見が交わされ、これからの日本や沖縄を支えていくティーンエージャーはそれらの偏った意見に振り回されることなく、高いリテラシーでこの問題を考えてほしいと願っています。
記事中の情報
内閣府「沖縄政策」→こちら
防衛省「在日米軍に関する諸施策」→こちら
沖縄県「辺野古問題最新情報」→こちら
沖縄県「知事公室辺野古新基地建設問題対策課」→こちら
コメント